光が死んで、一週間が経った。
仕事の報告を上に伝えたり、なんやかんやしたり……
やっと一息つくことができたわ。
そっとニンゲンの世界に下りて、あのベンチに座る。
ここには光との思い出がたくさんつまっている。
ここにいるだけで、光がそばにいるような感じがあって、不思議なぐらい安心する。
「華ちゃん?」
「…看護師さん?」
「よかったわ。もう会えないかと思ったの」
にこ、と笑ってこちらに来たのはあの看護師さん。
今日は私服だったからか、ぱっと見では誰か分からなかった。
仕事はお休みなのかしら。
「華ちゃんには、すごく感謝してるの」
隣に座ってしばらくすると、看護師さんは口を開いた。
「光くんのことは、小さなときから知っていたから。
病院の外の世界に憧れて、そのくせ全てを諦めたような感じで……
でも、華ちゃんに会ってから変わったわ」
嬉しそうに顔を緩めて私を見る。
「ありがとう。華ちゃんと過ごした日々が、光くんにとって、本当に生きることができた日々だったと思うわ」
「…………」
「これ、光くんから」
「光、から?」
「ええ。自分が死んだらあげてほしいって預かっていたの。
それと、これも」
そう言って看護師さんが鞄から取り出したのは小さな袋。
中には小さな箱と光の眼鏡が入っていた。
「また、気が向いたら病院に来てね」
それだけ言って、看護師さんはどこかへ行った。
眼鏡……そういえば、私が光の病室に置いたままにしたのよね。
私がもらってもいいものなのかしら。
それに……
小さな箱に目を向ける。
………何、かしら。
箱をじっと見つめるけれど、案の定何も変わらない。