ありがとう、と言って光は私の前にしゃがんだ。



「隣に座らないの…?」


「こっちの方が華逃げられないし。
それに、華の顔見やすいから」



……聞かなければよかった。


自分の頬が熱くなったのが分かる。



「ははっ、華照れてるでしょ」


「……照れてなんかないわ」


「そう?まぁいいや」



くすくすと笑いながら光は私の髪を掬う。


その感触に戸惑いながらも私は光を見続けた。



光の話を、聞きたかったから……




「……初めて会ったときのこと、華は覚えてる?」


「……覚えてるわ」



忘れるはずなんてない。


桜の花びらが舞い散るあのときを。



初めての世界、初めての場所。


初めてのニンゲン……


今思えば、私はあのときから光の笑顔に惹かれていたのだと思う。



「そっか。俺も覚えてる。華がここにいて、桜を見てたこと。
華って見た目が黒髪黒目で、昔ながらの日本人って感じなのに桜を知らなくてびっくりしたよ」



あはは、と笑う光に私も少しだけ笑みを溢す。


ほんと……今だから思うけれど、今の私からしたらそれは確かに不思議よね。



「俺、あのとき自分の余命のこと聞いた直後だったんだ」


「え……」



じゃあ……光は自分がもうすぐ死ぬって分かってたってことなの……?



「あぁ、そうなんだって……死ぬんだなって漠然と思って、病院抜け出して、華と出会った」


「……!!」



ぎゅっと光は私の腰のあたりに手を回す。


服越しに光の体温が伝わってきてドキッと胸が跳ねた。



「ひ、光……」



離してほしいのだれけど……!!



「運命だと思った」


「運、命……?」