「何言ったの?」
「ん?…男の秘密?」
「……何よ、それ」
「いいのいいの!じゃな!」
「えぇ」
そう言って夜は消えた。
いつも思うけれど、夜って神出鬼没なのよね。
気を抜いていると気付かないし……心臓に悪いから止めて欲しいわ。特に今日はびっくりしたわ……
振り返ると光はまだ寝ていた。
……あれだけ騒いでてまだ寝ていられるってすごいわね。
「光……私………」
またそっと手を伸ばして光の頭を撫でる。
光が寝ているからかしら……自分が少し大胆なのを自覚できるわ……
さらさらと起きないように気を付けながら撫で続ける。
穏やかに寝ている光を見ていると、暖かくなる私の心……
……愛しい。
多分、この感情が愛しいっていう感情なのね……
こんな気持ちになるのも……きっと、光のことが……
好き、だから………
こんな気持ちになれたのは全て光のおかげ。
「……ありがとう」
本当に、ありがとう……
だから……もう、会わない。
私は、光のことを好きでいていいって、許されただけで、もう十分……
でも、それでも私は光のそばにいるべきではないと思う。
光の……残りの人生を、私が台無しにするわけにはいかない。
私が、光を殺すのは、変わらない……
変えられない……
だから……私はもう光には会わない。
せめてもの償い……
「光……」
好きよ………
その言葉を飲み込んで……
別れを告げる。
「……バイバイ」
私は撫でていた手を離し、そのまま病院を出た。
来たときと変わらずに降っている雨。
私は傘も差さずにそのまま外に出た。
行くところもなくて、自然と向かった先は……
光と来た、ひまわり畑だった……。


