綾乃side

どうしよう……。

あんなこと言うつもりじゃ……なかったのに……。


杉山君の顔を見ると……音ちゃんが浮かんでくる。


何を言われても、音ちゃんの顔が浮かんできて……


……痛い。

……苦しい。


……私が手を振り払った瞬間の、杉山君の顔……

とても驚いていて……それでいて、どこか切なそうで、悲しそうで……


どうしてそんな顔するの……?

どうして……


だって、杉山君は音ちゃんが……。


「……もうイヤ……」


音ちゃんも……杉山君も……振り切って逃げてきちゃった……。


……私はいつも逃げてばっかり。

こんなの、嫌なのに……

いつまで経っても治せない、こんな私……。


「ごめん……なさい……」


謝りたい人はここにはいないのに……

誰もいないのに……

……なぜか口からそんな言葉が出てきた。