……先輩は俺の顔を見て優しく微笑む。
「前は海斗に対して嫉妬してたこともあったよ。
それこそ付き合う前とか。
……けど、分かったんだ。
俺はきっと一生海斗には敵わないって」
「は……?」
ちょっと……意味が分からない。
「悔しいけど、海斗の方がよっぽど音羽のこと理解してあげられると思うし、何でも分かってると思う。
それがもどかしくて、いつも音羽のそばにいた海斗が羨ましいって思ってた時期もあったよ。
正直言えばな」
……確かに、前に先輩に言われたこともあったっけ。
幼なじみの俺が羨ましいって。
その時はまだ先輩と音羽が付き合う前で……
俺からしたら先輩の方がよっぽど羨ましかったんだけど。
「でも……分かったんだよ。
音羽がどれだけ海斗のことを大切に思ってるか。
それに、俺自身がどれだけ海斗のことを気に入ってるかってこともな」
「気に入ってるって……」
「そんな海斗を音羽から奪いたくないし、俺も海斗に離れていってほしくない。
そう思ったら自然と嫉妬とかそういう気持ちが消えてった」
先輩はそう言って笑う。
「……意味分かんないっす」
「ははっ、俺もよく分かってないけど。
でも、とりあえず海斗は俺にとって可愛い後輩ってことだ」
……何なんだよ、この人。
本当に……何なんだよ。
……これだからこの人は……憎めない。

