沢木も窓の方に視線をやり、外の景色を見て俺に話しかける。
「もう始まってるんじゃ……?」
確かに、今ここから見えるグラウンドではサッカー部が活動し始めている。
本来なら走ってでもすぐに行かなきゃいけないだろう。
「……そうだな。
急がなきゃな」
「杉山君……?」
さすがに沢木もおかしいと思ったのか、心配そうに俺を見つめる。
その視線に気がついた俺はハッとして慌てて作り笑いを浮かべる。
「杉山君……大丈夫?」
「え………?」
「あ、ご、ごめんなさい……。
でも……何かいつもの杉山君じゃない気が……」
……気づかれたくなかった。
でも……そうだよな。
こんなの……俺らしくないよな。
「……そうか?
あー……ちょっと風邪気味だからな。
そのせいじゃないか?」
「え……風邪?」
「ごめん、そろそろ本当に行かなきゃ」
「あ……うん」
「また明日な」
……沢木にそう言うと、俺はまるで逃げるように足早に廊下を歩いていった。

