メランコリィ (1/4)

「お嬢様、いつまでもむすっとされていないで。一時間もすれば菱沼様がいらっしゃいますよ。」

彼女はいつも凛としていた。奥様ーお嬢様のお母様ーが亡くなった時も、可愛がっていた黒猫が死んだ時も、いつも真っ直ぐ前を見据えていた。薄茶色のビー玉のような瞳に涙を浮かべる事はなく、来るべき時が来たのだと、それを受け入れた。

「お嬢様……そのような顔をなさっていては、旦那様にまた叱られてしまいますよ?」

私は、努めて普段通り。彼女がいつも美味しいと褒めてくれた、ミルク多めのミルクティーを淹れる。今日の彼女はいつもと違う。ぼんやりと、白いレースのカーテンのかかった窓の外を、遠い目で見つめるだけだ。