気づいていなかったわけじゃない。







……逃げてた自分に。







飛龍の奴らといると、思ったより落ち着くって、落ち着きすぎてたって、









……気づかなかったわけじゃない。






逃げてた。あたしは。








「……バカ、なんかもな、舞月も、俺も」







マスターは、小さく笑った。







「……、」









無言で部屋の奥に向かうあたしにの背中に、マスターは一言言った。












「自分、もっと信じたらどうや」







……なにを?







自分を?周りを?みんなを?








……人は一度裏切られると長い間「またやられるかも」って思いからぬけだせないみたいだ。









閉じた扉の向こうでマスターのため息が聞こえた。