「……助かった。」 「総長の名前は。」 「田中信一(たなかしんいち)。」 あたしはバッと顔をあげた。 田中……信一? 田中信一ってまさか……「あの」田中信一? 飛龍の皆は苦しそうに顔を歪めたままうつむいていて、 誰もあたしの動揺には気づかない。 信一が……翔馬の総長だったの? 人殺し……、信一がそんなことするはずは、なかった。 「……なきゃ、」 「え?」 行かなきゃ。 あたしは意を決して幹部室を走り出た。