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頭痛と共に目が覚める。

重い瞼をゆっくり開けて、見慣れた天井を見つめる。
カーテンの隙間から入る光がゆらゆらと薄暗い部屋を照らしていた。

早いもので彼と別れて、5日が経つ。

「……はぁ」

原因は、彼の浮気だった。
浮気をされていたことよりも、結局は私ではなく相手を選んだことが悲しくて仕方ない。
でも、この痛みに堪えきれずに流れた涙さえ愛おしいのだ。

それくらい彼が好きだった。

「涙って枯れないんだな…」

またゆらゆらと揺らぎはじめる視界。
5日間、一歩も外に出ずこれを繰り返している。
涙が枯れたら、少しは楽になれると思ったから。

でも、枯れる気配なんてない。

涙をルームウェアの袖で拭き取り顔を上げると鏡にうつる自分が目に入る。

赤く腫れた瞼に、深いクマ、青白い肌、涙のあと。

ー♪♪♪

彼への気持ちが涙として溢れ出すのを阻止するかのようにメールの受信音が鳴った。

「…っ翔太」

彼の名前を思わず口にしてしまったが彼から連絡なんてくるはずもなく、スマートフォンの画面には友人の名前がうつしだされている。

メールには、私と彼のことを知ってビックリした。会って話をきかせてほしい。少しでも支えになりたい。
と、書いてあった。
それだけで良かったのに、私は最後の彼女の一言に胸にえぐられるような痛みを覚えた。

この恋を忘れるために早く次の恋をしなきゃね。幸せになろう!

「何…それ……」

そんな簡単に言わないでよ。
忘れるって何を忘れるの?
私は彼が好きだったことも、彼との思い出も、この先ずっと大切にしていきたいと思ったんだよ。
それなのに忘れなきゃいけないの?

忘れなきゃ、幸せになれないの?

充電が切れて真っ暗になったスマートフォン。
また溢れそうになった涙を拭いて、充電器と本当の幸せを探す。