俺は、ゲン。

月見山 幻のゲン。

この身体は、アヤのものだけど。

生まれた時には、ここに俺も居た。

理由は、分からない。

ただ母に否定されなかったことだけが救いだった。

最初は、問題なかった。
子どもは、元気なものだと皆が感じていたから。

ただ…母にだけは、知らせたくなかった。アヤの身体に、俺がいれば、いずれは、迷惑をかけるから。

だから、俺は早く体を探したかった。

探す意味や場所なんて知らないが。
本能が、知らしていた。
俺には、俺だけのあり場所があると。


それから、俺には、たまに抑え難い衝動がある。破壊的な衝動だ。

何かに追われて、何かを壊すような。

そして、その時には、右手に剣があるように思えた。


昔から、剣術は好きで、剣道の他にもいくつか武道を習った。

ただ、アヤの身体に傷をつくならない事が、母との約束だったから、習い始めで辞めることが多くなり、残りの欲求不満は、自主練にあけくれるハメになったが。

今でもやりたいとは思うが。


月見山 幻の体も、もう15歳を過ぎた。

派手な動きをするには、女の身体重く脆い。

だから、諦めないといけない話も増えてきた。

ますます焦るよな。


俺は、俺の身体が取り戻したいと思うようになっていった。


さぁ、始めよう。

朝が早くなるように、既に歩き始めた道を歩いて行くだけだ。