ヘタレ彼氏。

「ねえねえ!これすごいよ!」

「うるさい」

あれやこれやと騒ぐ私をうるさいと一括するしんたろー。
周りから見れば痴話喧嘩だと思われるかもしれないが、私たちにとってはこれは「日常」である。

「見て!これ…」

口を塞ぐように唇に柔らかい物が触れ、その意味に気がついた時はしんたろーは悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
私の顔が徐々に熱くなっていく。
きっと、顔が真っ赤になっているだろうなんて思いつつ、私は彼を罵った。

「……ばかやろー」

「これで静かにしろ、な?」

にしし、と笑う彼にもう一度悪態をつく。
でも、嫌いになれないのは、「惚れた弱み」ってやつだと思う。

「ばーかばーか」

「はいはい、わかった」

またしんたろーのファンが増えていく事も知らずに、こんな会話を何度も何度も私たちは続けたのであった。




…私たちを狙う、奴ら達にも気付かずに________