彩花もその気になったようだ。
 二人に押される感じで、御手洗は、
「じゃ、早速行こう。噂の学校に」
 大きな肩掛け鞄を、掛け直して言った。
「そこって遠いの?」
「いや、ここから歩いてすぐかな」
 御手洗は歩きながら答える。
 夕方のせいもあって、辺りにそれほど人も居ない。
 ちらほらと住宅が立ち並んでいる。
 横断歩道を渡った先に、学校を思わせる建物が建ってある。
「ここだよ。噂の学校は……」
「ここ? 随分と古い学校ね。いかにも出そうな雰囲気……」
 私は、息を飲んだ。
 彩花は私の手をしっかりと握っている。
「暗くなる前に、済ませよう?」
「そうだな、できればそうしたいところだよ」
 御手洗が、歩き進んで、私達は、後に続く。
 廊下がヒンヤリしていて、すぐそこか、幽霊でも出てきそうな雰囲気だ。
 彩花は、私から離れようとしない。
 怖がりだから仕方ないかも。
「何処に行くの?」
「四階の女子トイレだよ」
 前を向いたまま、御手洗は答えた。
「出来過ぎだね。四階なんて……」
 私は、御手洗の背中に話し掛ける。
「そうかな? 佐々木さんが考え過ぎなんだよ」
 一階ずつ上へ上がりながら、御手洗は答える。
「ここのようだな……」