いつものように、彩花は気を失って倒れてしまった。
「安東さん、どうしたの?」
 真美は、しゃがんで、彩花の体を抱きしめる。
「篠原さん、大丈夫です。彩花は今は少し意識失ってますけど、もう少ししたら、目を覚ましますから」
 私も、その場にしゃがんだ。
「…う、ん……」
 彩花は、真美の腕の中で目を覚ました。
「彩花、わかる?」
「また、気を失っていたの?」
 彩花はゆっくりとした口調で聞いてきた。
「そうよ。意識取り戻すまで側にいたのよ」
 私が説明すると、彩花は納得したようだ。
 相変わらず、彼女には祐美に憑かれていた時の記憶はない。
「さ、帰りましょう。送ってあげるわ」
 真美が立ち上がると、私たちもつられて立ち上がった。


「篠原さん、本当に祐美さんとの約束を守ってくださいね?」
「もちろんよ。佐々木さんたちの前で約束したものね」
 真美は車を走らせながら言う。
 彩花は、私に寄りかかってうつらうつらしている。
 それも無理もない。
 今日まで、何回も霊に身体を乗っ取られたりしたのだ。
「そろそろ、家に着くわよ?」
 篠原さんが、ルームミラー越しに声をかけてきた。
「彩花、起きて。もう着くって」