一瞬にして野田さんの表情が硬くなった。
「ここでね、不思議な事が起こるのよ。肝試しに、私の教え子たちが行きたいって言うから、こうして保護者代わりに、大人が二人同伴したら、安心だしね?」
 言いながら、真美はしっかりと野田さんの手を握っている。
「ね、こうして、あの頃もよく手を繋いで学校に行っていたわね」
「そ、そうね。でも、廃校って不気味ね…。その不思議な事を体験したらすぐに帰れるの?」
 真美に連れられながら、野田さんは聞いている。
 私たちは、二人の後を着いていく。
「ね、今日ですべて終わるのかな?」
「そうだといいね」
 私たちは小声で話す。
「これで最後にできるように、僕も頑張るから」
 御手洗も小声で話す。
「ここで不思議な事起こるのよ」
「この女子トイレで? まるで、トイレの花子さんみたいね」
 真美の隣で、野田さんが言うと、
『まさにその通りよ。懐かしいわね。野田さん、元気にしていた?』
 彩花に憑いた祐美が、できるだけおだやかな口調を話す。
「貴女は…今野さん?」
 記憶を辿るように、ゆっくりとした口調で野田さんは聞いた。
「ええ、そうよ。名前を覚えているなんて嬉しいわよ」
 祐美は少し意地悪な顔をして、微笑んだ。
「誘われて来てみたけど、私にどうしろって言うの?」
『私がこうなったのも、貴女と篠原さんのせいよ。篠原さんには、謝ってもらったわ。だから、貴女にも謝ってもらいたいの』
 祐美は淡々とした口調で話した。
「あの時の事を今更、謝るなんて…」