「望美、あのね、私に気を使わないでいいからね?」
「そうだね。あ、今日も泊まる?」
「今日はそろそろ帰ろうかな。毎回、泊まってばかりもいられないし。そろそろ帰るよ」
「そう? じゃ、また明日ね」
 私は、彩花を見送った。


 私たちは、授業が終わって、真美と合流した。
「はじめまして、野田と申します」
 上下グレーのスーツ姿の女性が、真美の隣で挨拶をした。
「野田さん、こちらにいるのが、私が教育実習でお世話になってる中学校の学生たちで、右から、御手洗君、佐々木さん、安東さんよ」
 真美が順番に私たちを紹介してくれた。
 私たちは、紹介を受け、軽く会釈した。
「さ、乗って? 行きましょう」
 そう言って、私たちを車に乗せると走らせた。
「ね、一体どこに行くというの?」
 助手席から野田さんが真美に聞く。
「とても懐かしいところよ。行ったらわかるわ」
「懐かしいところ? ちょっと楽しみね」
 わくわくした面持ちで野田さんは話す。
 きっと、野田さんには詳しく話をしていないのだろうと、私は思った。
 しばらく車を走らせると、いつもの見慣れた風景だ。
「ここって…」
「そう。私たちの母校よ。懐かしいでしょ?」
「まぁ、懐かしいと言えばそうだけど。この子たちは、なんのために連れてきたの?」