『…それは演技しているの? 確か、嘘泣きが得意って言っていたわね。その涙も嘘?』
 祐美は、強気の態度を崩さない。
「嘘泣きは得意だけど、今は本当に反省して泣いているの」
『本人がそう言うなら信じるしかないわね。本当に心底悪かったって思って謝ってくれているの?』
 祐美が聞くと、真美は、何度も頭を深々と下げて謝り続ける。
「なんかすごく反省してるみたいだよ?」
 私はあまりにも二人のやり取りを見ていられなくなって、思わず口を挟んでしまった。
『仕方ないわね…。そんなに言うなら、許してあげてもいいわ』
 祐美はそう言うと、ふっと優しい顔になる。
「許してくれるの?」
 真美は、おそるおそる祐美に聞く。
『そうね、それに、わざわざ足を運んでくれたから。だけど、まさか死んでしまったなんて思わなかったでしょう?』
 静かな口調で祐美は話す。
「そうね。あの時はこのような事になると思わなかったから。野田さんも、同じ気持ちだったはず」
『そうね。きっと、野田さんも、貴女と同じ気持ちだったかもね。今なら、そう思えるわ』
 祐美は、納得したように頷く。
 私たちは、取り敢えず、二人の様子を見ているしかなかった。
「いつになったら、彩花の体を返してくれるのかな?」
 私は、祐美に聞こえるか聞こえないかの声で、御手洗に聞いてみる。
「おそらく、あともう少しはこのままかと……」
 御手洗は、緊張した面持ちでそう話した。
 私たちの事が見えていないかのように、二人の会話は続いているようだ。