「待っていたわ……」
 どこからか声がするが、振り向いても誰もいない。
「君に頼まれた物を持って来たよ」
 御手洗が話し掛ける。
『そう。有り難う……』
 すぐに彩花に憑いて話す。
「その身体を借りて、君は何をしたい? このノートと何が関係あるんだ?」
 御手洗は、ノートを祐美に差し出して、聞いた。
『前にも話したように、あの人達に謝って欲しい。身体がない魂だと、そういうのは不可能。だから、誰かを借りたい。入りやすい身体が、この身体なの。もう少しで、きっと全ては終るから』
 ノートを受け取って、祐美はそう言った。
 それから、ノートをめくって、
『この二人に、謝罪させたいの。そうしたら私はあの世に逝く』
 ある一ページに書いてる名前を指差して、祐美は言った。
 そこに二人の女性の名前が書いてある。
『なんとしてでも、この二人に謝って貰いたいの』
 そう言うと、祐美は泣き出した。
「この二人の電話番号は?」
 出来るだけ、祐美を刺激しないように私は聞いた。
『電話番号は、知ってる』
 祐美は小さく笑った。
「書く物ならあるよ」
 御手洗は、鞄からボールペンとメモ帳を取り出して渡した。
『有り難う』
 受け取ると、すらすらと書き始めた。
「凄いね、覚えているんだ?」
『ええ。嫌でも覚えてるわ。無言電話した事、何回もあるから……。コレ、有り難う』
 そう言うと、御手洗に筆記用具を返した。