「取られるとか、物みたいな言い方やめて? 私たちずっと親友だからね」
 私は彩花に笑顔を向けた。
「それなら良いけど」
 彩花は時々、歯に物が挟まったような言い方をする。
「なんか突っ掛かってくるよね」
「気のせいだよ。なんか疲れたな」
 彩花は、小さく欠伸をする。
 確かに疲れたのかもしれない。
 祐美に振り回されているんだし。
「今日はもう休もう。私も、何だか眠いし」
 私もつられて欠伸が出た。
「寝ようか」
 私達はよほど疲れていたのか、朝まで起きなかった。
 目を覚ますと、部屋にはすでに朝食が用意してあった。
 彩花のおばさんは、私達に気を使って、部屋に運んできてくれたんだ。
「彩花のうちでご飯食べるのも久しぶりだな」
「だよね。でも、たまにはいいよね」
 彩花はのん気にそんな事を言った。
 私は、朝食を食べながらも、今日の事を考えていた。


 約束の時間になって、私達は再びあの廃校に向かった。
「早いとこ済ませよう?」
「僕もそれを望むよ」
 最初の二言のみで目的地に着くまで、一切会話が無かった。
 それだけ三人は緊張をしている。
 相変わらず、校舎内はひんやりとしていて不気味だ。
【待っていたわ】頭に響いた。