「彩花を、そういう事に使わないで! 貴女だって、本当は復讐なんて望んでないでしょ? 今さらそんな事して何になるの? お願いだからやめて……」
 私は、ぽろぽろ涙を零しながら訴えてみる。
(彩花をのまれたままにするもんか!)
「彩花! 聞こえたら返事して! 私の元に戻ってきて!」
 私は、叫んだ。
「荒治療だが、やむを得ないな……」
 御手洗は、再びお経をあげ始める。
『あうっ ううっ うう…っ くっ 苦しい…っ』
 耳を塞いで、御手洗の腕から離れて、床に転がって、身悶える。
 それでも、御手洗はお経を止めようとはしない。
『ああっ うう…うー! 苦しい…』
 転げ回り、身悶えていたが、やがて、涙を流しながら、途切れ途切れに、話し始める。
『ご、ごめんなさい……。私は、ただ……謝って欲しかった』
 祐美が話してる間も、御手洗は、ひたすら、お経を、あげ続ける。
「謝ったら、許すつもりだった?」
 私の問い掛けに、祐美は、静かに頷いた。
「ずっと待っても、誰も来なくて、亡くなってから、こうして出る様になったのね?」
『そのうち、憎しみだけが残って、逝くにも逝けなくなってしまった。だけど、話して少し楽になってきた…』
 泣き疲れた様子で、そう話した。
「そう。良かったね。だったら、その子から出てもらえる?」
 出来るだけ優しい口調で、私は、祐美を宥めた。
『もう少ししたら出るわ』
 気のせいか、少し落ち着いたように見えた。
「気持ちが楽になったら、貴女は、きちんとあの世に逝って?」