家に帰ると妹が笑顔で俺を
迎えてくれた。

この笑顔を守ろう

そう決心したのは
いつだっけ…。

ずっと昔に誓ったみたいに

思い出すことができない。

「お兄ちゃん、どうしたの?」
『ん?あぁ…なんでもない』

東大寺…梓っけ?
あっさ…って聞いた事ねぇ…よな。


妹とご飯を食べて、寝かして、
勉強をしていると
優しい足音がした。

『母さん、お帰り』
「あ、コウ、まだ起きてたの?」
『うん、勉強…』

と言って実は母さんのこと待ってた。

時々母さんが急にいなくなる気がして
恐くなる。

母さんに会わなかった日は
そういう夢を見る。

それが恐くて必ず1回は
会うようにしている。

『んじゃ俺寝るわぁ』
「うん、おやすみ」

俺は笑って部屋を出て行った。

母さんが「待って」と言った。

『ん?何?』
「あっさちゃんは元気なの?」

――――――――あっさ?

『誰…それ。俺しらないよ?』
「ヤダ、同じ学校でしょう?」

            マジかよ…

『…実は今日会ったよ。でも俺
 覚えてないから知らないって言った』
「じゃあ向こうは覚えてるのね」

げ。いらんこと言った…。

『…急に俺の名前言ったんだよ。でも
 あいまいって言ってたし…』
「あっさちゃん、大丈夫かしら…」
『へ?なんかあったの?』

母さんは

「思い出せたらいってあげる」

と優しく微笑んだ。