「お、起きてたの!?」
「はい。ずっと目を閉じながら、香澄先輩のことを想ってました」
「……またそういうこと言う……」


照れもしないで、真顔で言う峰岸くんの言葉は、あたしを困らせてばかり。

いったい、この子の頭はどうなっているのだろうか……。


「ってか、待ってたの?
 先に帰ってていいよ、って送ったのに……」

「そんなことで、帰るわけないじゃないですか。
 俺と香澄先輩が恋人でいられるのは、もしかしたらあともう3週間しかないかもしれないんですよ。
 だから、たった一日でも逃すわけにはいかないんです」

「……」


席を立ちあがって、あたしに鞄を渡す。

あたしは答える言葉が見つからなくて、鞄を受け取ると下へ俯いた。