小悪魔な彼

 
「そうすれば、香澄は猛さんのこと、一生恨んで、好きになることはないのに……。
 俺のもとから離れる心配もしなくて済むのに……」


「………もう…」



あたしは颯太の手を取ると、そっと自分の頬に重ねた。
 

「猛にぃへの恨みが晴れたとしても、あたしが心変わりすることはないよ。
 あたしはずっと颯太のことだけが好きだから……。

 あたしこれでも、今までで感じたことのないほど、颯太のことが好きなんだよ」

「……」


微笑みながら見つめると、少しだけ颯太の不安な表情がとれる。

颯太は親指だけ動かし、あたしの唇をなぞった。