もっともっと、ちゃんと考えればよかった。


颯太と葵ちゃんがキスした理由とか、
あんなにも偶然に決定的な瞬間だけ見たこととか、

今思い返せば、不自然なことだらけだ。



今ならわかる。

颯太がどうして、葵ちゃんにキスされた理由を話さなかったか……。



颯太は優しいから……

きっとあたしを傷つけないようにしようとして……



ドンッ……!!

「きゃっ……」



走って、曲がり角を曲がった時、ちょうど向かい側から来た人にぶつかってしまった。

弾みで自分の体が後ろへ下がったが、すぐに体勢を整える。


「すみま……ひゃっ」


謝ろうと顔を上げた瞬間、あたしの体は何かに包み込まれる。



それが今ぶつかった人に抱きしめられたんだと、すぐに分かったし、
視界はその人の肩にあって、誰かなんて顔は見えなかったけど……



「……そう…た…」



今、あたしを包み込んでいる人が、颯太だってことはすぐに分かった。