小悪魔な彼

 
「で?うまくいってんの?香澄ちゃんと」


あたしの名前が出たとき、体中に電流が走ったかのようにドキッとした。

あの日から、葵ちゃんにたいして、妙な警戒心がある。


「即答しないってことは、うまくいってないだー」
「うるせ」


笑いながらはしゃぐ葵ちゃんに、一言で返す猛にぃ。

あたしはそのまま、耳をたてて二人の会話を聞くことにした。


「まったく、ちゃんとしてよねー。
 あたしは猛のために、自分のプライド捨てたんだから」

「べつに頼んでねぇだろ」

「頼んでるようなもんだったじゃん!
 せっかく、颯太くんに無理やりキスまでしたって言うのにさー。
 ちゃんと香澄ちゃんに、その場面を見せたんでしょ?」

「……ああ」


ドクン…と、心臓が飛び跳ねた。