適当に走ってきたけど、さすがは17年間暮らしてきた町だ。
猛にぃのアパートには、迷うことなく着いた。
猛にぃの部屋がある2階を見上げたとき、一つの影が目に入った。
「葵ちゃん……?」
葵ちゃんらしき人物が、まさに猛にぃの部屋に入っていく姿が見えた。
あたしは気になって、足音を立てずに階段を上った。
猛にぃの部屋の前。
そっとドアに手をかけると、鍵は開いているみたいで、かちゃりと静かに開いた。
そして中から……
「ほんとバカだよねー!携帯忘れてきちゃった」
「アホ。お前、今日中に家帰れんの?」
「大丈夫大丈夫。それにあたしの学校は、明後日からだから帰れなくてもなんとかなるし」
「あそ」
やっぱり、葵ちゃんの声が聞こえた。

