小悪魔な彼

 
うん…
ちゃんと話に行こう。

もう一度、自分の気持ちを伝えよう。


颯太がもしも、自分の意思で葵ちゃんにキスをしたと言うなら、あたしはもう颯太を諦めよう。


たとえそこに想いがなくても、遊びでほかの女の子にキスできるような人は、この先どうやっても不安だから……。



「あ…鞄……」



気持ちを固めて、ふと気が付いた。

手ぶらな自分。
思えば、あのまま猛にぃの家を飛び出てしまったから、財布も携帯も入った鞄が猛にぃの部屋だ。


とりあえず、鞄を取りに行かないと、颯太の家に行くことも出来ない。



あたしはもう一度息を深く吸い込んで、今来た道を引き返していった。