小悪魔な彼

 
「ちがっ……これはっ……」


慌てて颯太から離れると、首元を手で押さえた。

だけど、颯太は信じられないと言ったような目であたしを見る。


「それ……キスマーク…ですよね。
 猛さんが?」

「……」


答えられない。

決して望んでつけられたものじゃないけど、一瞬の迷いもあったのは事実だから。


「……もう…手遅れってことか……」


うなだれるように、一歩後ろに下がる颯太。


そんなことない、って叫んで抱き着きたい。


だけど……


頭の中で、颯太と葵ちゃんがキスしている姿が離れなくて、素直に体が動かない。