小悪魔な彼

 
確かに、さっきの猛にぃの言葉には揺らぎそうになった。

だけどやっぱり、今颯太を目の前にして、猛にぃのもとへ行こうなんて思わない。


でも……


理由を知らずに、あのキスを流すことなんて出来ないよ。



「……かすみ…?」



その時、颯太はあたしの一点を見て止まった。

あたしには、颯太が何を見ているのか分からない。


「きゃっ!!」


急に腕を掴まれ、髪をかき分けられる。



「これは……何…?」

「え?」



何のことを指しているのか、最初は全然分からなかった。


だけど触れそうな距離に指を指され、ようやく合致する。



さっき、猛にぃにつけられたキスマークだ。