そんなのはずるい。
キスした理由も言わないで、あたしを好きだと言って……。
「もういいっ!
こんな颯太の傍になんかいたくない!!」
「待ってくださいっ」
「…っ」
立ち去ろうとした腕を取られ、後ろから颯太に抱きしめられた。
「は、なして……」
「行くな。絶対に行くなっ」
やっぱり颯太はずるい。
こういう時に、敬語をやめて、命令口調で話す。
振り切りたいのに、体に力が入らなくなる。
「猛さんのところになんか行くなよ」
「猛にぃは関係ないっ」
「でも、電話では喧嘩を売られた」
「それは……」
猛にぃの、一方的な言葉だ。

