小悪魔な彼


「………え?」


決定的な言葉を聞いて、あたしの動きが止まった。


だって今、ありえない言葉を耳にした……。


「ごめんね。
 香澄ちゃんの彼氏なのに……
 好きになっちゃいけない人なのに……」

「……」


何か言い返したいのに、返す言葉が見つからない。

あたしはなんて言うべき?


「あ、でもっ……
 べつに香澄ちゃんから奪おうなんて思ってないよっ。
 それにあたしは、冬休みが終われば向こうに戻らないといけないんだし」


葵ちゃんは、切なそうな顔をする。


「さすがにこの年で遠距離恋愛なんて無理。
 だから、ね……お願いがあるの」

「……なに…?」

「この休みの間だけ、颯太くんを好きでいることを許して」


この質問に、あたしが拒否する権利はあるのだろうか……。