小悪魔な彼

 
「あのね、こんなこと香澄ちゃんに言うべきかどうか悩んだんだけど……」


グラスを両手で握り締め、下へうつむく葵ちゃん。

あたしは葵ちゃんをじっと見つめていた。


「昨日、一緒にテーマパークに行ったでしょ?
 颯太くんも一緒に」

「うん」

「それで、グッズが欲しくて、香澄ちゃんに無理言って、パートナーを颯太くんにしてもらったんだけど……」

「……」


ゆっくりと顔をあげ、あたしを見つめる。

その目を見て、瞬時に嫌な予感がした。


葵ちゃんの目はうるんでいて、誰が見ても……


「あたし……」

「……」



「颯太くんのこと……

 好き…になっちゃったみたいなの」



恋をしている目だったから……。