小悪魔な彼

 
「……あれ…?
 ここどこだろ……」


がむしゃらに走って、気が付けば一人だった。

いまだに迷路の中で、ゴールがどこにも見つからない。


「どうしよう…完全に迷子だ」


ただのゲームかもしれない。

だけどこんな巨大な迷路。
たった一人でさ迷うという恐怖が、あたしを襲った。


「………颯太ぁ…」


時間もどれくらい経ったのか分からなかった。


1時間は経ってる?
もしかして2時間近く?

きっとみんなはもうゴールしてるよね。
早くゴールしなくちゃ……。


そう思っても、ほかの人すらもこの道を通らない。

どうやら一人、めったに人が通らないところまで迷いこんでしまったようだ。


「颯太っ……颯太っ!!」


怖くて、一人ぼっちに急に不安になって、あたしはがむしゃらに颯太の名前を呼んだ。

だけど誰も現れない。