小悪魔な彼

 
(や、やだよ!)
(お前に、拒否権はない)
(きょひけん?なにそれ)
(いいからうなずけ!ほら!)
(やっ……)


強引に頭を下げられ、頷けさせる。


(これで約束だからな)
(やだってば!)
(うるせー!)


結局、あたしの言葉は聞かれないまま、猛にぃたちは引っ越した。


しばらくずっと悩んでたけど、
引っ越してしまった猛にぃが、あたしの前に現れることはない。

いつしかそれはあたしの中の思い出となり、頭の片隅に追いやられ、忘れられた約束となった。


あたしにとって、その程度のものだった。


なのに……



(暇つぶし?
 お前、たったそのために理由で、わざわざ向こうからこっちに来ると思うか?)



知らない…

そんなの知らないっ……。