「今のお前なら、できんだろ」
「……」
あの日から、男勝りだった葵は、ボーイッシュな自分を捨てた。
結局すぐ引っ越しだったから、その時好きだった人を振り向かせることは出来なかったが。
磨きに磨きをかけて、「可愛い」という言葉がぴったりな女の子になった。
決して、香澄を恨んでいるわけじゃない。
だけど一度は、自分と同じ気持ちを味あわせてやりたい。
「……名前、なんて言うの?彼」
「峰岸颯太。お前とタメだよ」
「ふーん」
葵の目が、魔性の目へと変わる。
「あたしが颯太くんなら、兄貴は香澄ちゃんだね」
「……ふっ…」
兄妹の陰謀が始まる。