小悪魔な彼

 
カーテンに手をかけていた颯太の動きが止まり、あたしへ振り返る。

あたしは颯太を見上げていた。


「今の状況……分かったよ……。
 颯太がどんな気持ちでいるか……。

 だけど……まだカーテンを開けないで」


恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。

だけど今、この場から逃げたくなかった。


「香澄……」


颯太があたしのもとへ戻ってくる。

しゃがみこんで、あたしの頬に手を重ねた。


「……いいんですか?」
「聞かないで」


その返事なんか、もう言えない。
じゃないと、沸騰して蒸発してしまいそうだ。


颯太は微笑むと……


「好きだよ」


そう言って、あたしにキスをした。