小悪魔な彼

 
「俺、さっきからずっと我慢してるんですよ」
「え、が、我慢って……」
「好きな人とこんなにくっついて……
 抑えるのにどれだけ苦労するか分かってます?」
「……」


ドクンドクン……
自分にも、心臓の音が聞こえてきそうだ。

颯太の切なげな瞳が、あたしの中の何かが吸い寄せられていく……。


「だけど、香澄がまったく意味が分かってないから、必死に堪えてました」


テレビから流れる映画が、ラブシーンを迎えようとしている。

あんなに感動するシーンですら、今は耳障りにしかならない。