小悪魔な彼

 
「ありがとうございましたー」


店員さんのお辞儀とともに、お店を出るあたしたち。

その姿が見えなくなると、あたしはすかさず颯太を見上げた。


「な、なんでかけるって言ったの?」


てっきり、コンタクトもしてきているし、メガネはしまっていくものかと思った。
普段から、コンタクトと言っていたし。


「それは…」


目線だけちらりとあたしに向ける。
それだけで、ドキッとした。

だけど、颯太はさらに首を傾け、あたしを見つめた。



「香澄にもっとドキドキしてもらうため」

「…っ」



にやりと微笑んで、悪魔のしっぽさえも見える勢い。

だけどあたしの心臓は正直だ。
 

「し、しないよっ」
「それは困りますね」


天邪鬼に答えるあたしに、颯太は分かっているように笑うと、そのまま手をとって歩き出した。