小悪魔な彼

 
「朱里先輩、面白い人ですよね」
「ってか、二人であたしをからかってるだけでしょ」
「香澄がいちいち可愛い反応をするからですよ」
「……」


ダメだ…。
こいつに何を言っても、「可愛い」でまるく収められてしまう。

あたしはため息をついた。


「幸せ逃げますよ?」
「……颯太が幸せにしてくれるんでしょ?」


あたしの返しが予想外だったのか、颯太は一瞬目を丸くさせた。

だけどすぐににっこりと笑って、


「当然です」


あたしの手を握った。


「……ここ、学校」
「分かってます」


それなのに、手を離そうとしない颯太。

振りほどかないあたしも、同罪だ。



あちこちから、女子の視線を感じたけど、もはやそれは快感にしかならなかった。