顔を上げてしまえば、颯太と顔を合わせることになってしまう。 だからあたしは、ずっと俯いたままで状態を保っていた。 目の前には、颯太の胸元。 重なり合う場所から感じる温もりが、熱を帯びたように熱くなっていく。 ダメ…… やっぱりあたし…… 颯太に触れたい……。 「香澄…先輩……?」 あたしは、颯太の背中へと腕をまわしていた。