「香澄先輩?」 「え?」 「どうしました?」 「何が?」 「……いえ…」 何事もなかったように、平然ととぼけた顔をする。 そんなあたしの気を紛らわすように、少し強めの風が吹いた。 「今日は風が強いね」 「そうですね」 顔にかかる髪を耳にかけながら、前を向いた。 「あ、先輩」 ふいに颯太があたしの前に立ちはだかった。 つい目の前に現れたことに、ドキッとしてしまう自分がいる。 「動かないでください」 そう言って、颯太はあたしの頭へと手を伸ばした。