生きる入り口を探して、あてもなく走り回る。
他の4人を気にしている暇はない。とにかく誰よりも早く見つけなければ。

あと5人。残る入り口はあと「4」つ。

ガサガサ、ガサ

ない。ない。ない。
動物の形をかたどった植木。噴水の下。マスの目状の花畑。どこにもない。
日光がいたずらに肌を刺す。這いずり回るネズミを、あざ笑っているかの様だ。

「お。」

10m向こうで声がした。あのつるっぱげの老人だ。
夢中になりすぎて近くにいたのに気がつかなかった。

まさか、見つけたのか?

薫の脳が、「勇者」にあるまじき企みを描いていた。

「おじいさん、見つかりましたか?」

優しく、優しく訪ねる。こう見えても老人にはウケがいいタイプだ。

「あ、あぁ。ほれ、ここ。」

たしかにそれはあった。老人の指差す草むらに1m四方の鉄の板。もう、他を探している時間はない。

今ここに入らなければ、死確定だ。
おじいさん、申し訳ない。心の奥で謝った。

「おじいさん、ここじゃ入りにくいでしょう。さっきそこの花壇で大きい入り口見つけたんで、おじいさんあっち使ってください。」

「ふぉふぉふぉ、私にもこんな優しい孫がいたらいいんじゃがのぅ。ありがたく、使わせてもらおうかのぅ。」


ピー

「ナガタニゴンゾウ、シッカク。」