海渡と付き合って1週間が
立とうとしている。


窓のカーテンは閉めっぱなし。
合鍵はゴミ箱。
荷物はりっくがいないときに
こっそり持ってきているから、
殆どなくなっている。


りっくの家はあれから
電気がついていない。
帰った形跡もない。

一体どうしたものか。




~***~***~***~***~***~


時刻はもう11時。
今日はバイトってことで
こんな時間になってしまったのだ。


『疲れた~』
『うん、お疲れ様♪』
『ありがとー。』
『あははっ』
『ぎゅー』
『うん、ぎゅー。』
『ちゅー』
『…………。』
『あれ?』
『ん?』
『ちゅーは?』
『やだよw』
『えー。』
『恥ずい。』
『ぎゅー』
『ぎゅー』
『ちゅー』
『………………。』
『ぎゅーはいいのになんでちゅーは
 いやなの?』
『なんとく?』
『えーー。』
『まぁまぁ。』
『ケチッ』
『はいはい。』
『ぎゅー』
『うん、ぎゅー。』
『好き。』
『うん、好き。』
『本当に?』
『うん♪』
『そか。』


ごめん、ウソ。
まだ時間掛かりそう。


『明日の朝は何時?』
『ん~、6時30分で。』
『あいあい。』


一昨日から毎朝、海渡を起こす
約束をしたのだ。
そんで、ギリギリまで通話。


『ん~。』
『どうした?』
『ん?…あぁ。伸び~しただけ。』
『もう寝る?』
『寝る?』
『寝ようww』
『はーい♪
 じゃ、電気消すね。』
『あね。』
『あつ~』
『だね。』
『美姫も気を付けなよ?』
『へーき、へーき。』
『って言ってる人が1番危ないの。』
『ばーかいと。』
『ばーかいとってなんだー#』
『バーカバーカ!』
『はいはい。』
『もう知らな~い!』
『はいはい。』


あたし達は暫く無言でいた。
すると……


『~♪~♪~~♪』


口笛が聞こえた。
ケータイ越しで吐息も拾っていて…


『ん…。』
『!?』


思わず変な声が出てしまったのだ。


『なに、今の声。』
『別に。』
『え………』
『空耳だよ~。』
『あ、もしかして耳弱いとか?』


頑張って誤魔化していたあたしとは
裏腹にサラッと言ってしまう海渡。


『やっぱりバカ。』
『やっぱりってなんだよ#』
『そのまんま。』
『なに?あたりってこと?』
『ち、違うし!』
『ふ~。』


ビクッ


『ぁ……。』
『へー。弱いんだ?』
『違うって!』
『はいはい。ふー。』


ビクッ


『ん……。』
『ふー。ふー。ふー。』
『ふっ……ぁ……。』
『かーいい♪』
『うるさい!もうやめ!』
『えーー。』



~***~***~***~***~***~


この日を境に海渡は通話中に
息をかけることが多くなった。


完全に遊ばれてる……。