“ただの”夫婦か…

確かに、もう“教師と生徒”ではなくなるわけで。

ナオの誘惑は続くにせよ、学校で迫られることはなくなる。


実習の支障になると思って遠ざけていた分、ちゃんとかまってやれるようになるし…

そしたらきっと、ナオも落ち着くはずだ。


……よし。
迎えに行ってやるか。


「…龍はさ、」


そう決意したとき。

サチ姉がぽつりと呟いた。


「“自分は悪くない”って思ってるでしょ?」

「え…?」

「今回のことに限らず…
ケンカの原因はいつも、ナオちゃんが“勝手に”拗ねたり怒ったりするからだ、って。」

「…はっ?」

「だから今回も、ナオちゃんが反省して“自分から”帰ってくるのを待ってたんでしょ?」


何だ?それ。

なんで、そんなこと…


「確かに、ナオちゃんが悪いかもしれない。でもね、」


サチ姉は、諭すように続けた。


「同じだけ、龍も悪いのよ。」

「え…?」

「いい?夫婦のケンカは両成敗。どちらか一方が悪いってことはないの。」