「昨夜はごめんねっ」


――翌朝。

顔を合わせるなり、木下は人気のない場所へと俺を連れ出して…

勢いよく頭を下げた。


「あー…いいよ。別に」

「でもぉ…」

「いいって。たいしたことじゃないから」


……うん。
その後のことに比べたら、全然たいしたことない。

木下のお守りがどれほど楽だったか、思い知らされたからな。


うーっ。寝不足で頭がガンガンする。


「えーっ?マミ、沢木くんに超迷惑かけたでしょ?」


……っ。そのキンキンした声がまさに“迷惑”なんだけど。

頭に響く。


「マミ、実はあんまり覚えてないんだけど…何かやっちゃったりしてない?」

「…別に。」


グラスを倒して床をめちゃくちゃにしたり、

居酒屋の店員に足蹴りしたり、

タクシーのおっちゃんを“カッパ”呼ばわりしたり…はしてたけど。


俺にはたいした実害はなかった。

だからもう、解放してほしいんだけどなぁ…


「でも、それ…」


何かに気づいたのか。

じーっと。
いきなり、俺のことを凝視し始めた木下。

しかも、見ているのは襟元…?



「つけたの、マミだったりしない?」