私の名前は「神崎 麗美(かんざき うるみ)」
今日は、高校の入学式。私は、高校1年生になる。
高校生活は楽しみだけど、毎日疲れるだろうな。
そんな事を思いながら、入学式を終えて家に帰った。

次の日。
「今から部活動の入部届の紙を渡すから今日の帰りまでに提出するように。」

私は、迷わず書いた。

「硬式野球部のマネージャー」

硬式野球部のマネージャーになる事は私の夢だった。
私には、5歳上の兄がいる。
兄は、小学校、中学校、高校と12年間、大好きな野球をやっていた。
私は小さい時から兄の野球をやっている姿を見てきた。
だから、毎年、夏にある甲子園大会もテレビの前から見ていた。
勝ったチームも負けたチームも、みんな生き生きとしたプレーで楽しそうに野球をしている姿を見て、「私、高校で野球部のマネージャーやる!」と言ってきた。

ついに、その夢が叶うと思ったら嬉しくて仕方がなかった。

放課後に野球部の練習を見るまでは・・・。

キーンコーンカーンコーン

放課後になった。
私は足早に野球部の練習するグラウンドに向かう。

グラウンドに着いて、部員たちの事を見てびっくりした。

「エースがいない!」

どこにも、野球部のエース
「藤ヶ谷 太輔(ふじかや たいすけ)」
の姿がない。
近くにいた部員に聞いてみると
「あー。太輔さん、去年の夏終わってから練習来てないよ。」
と言われた。

去年の夏・・・・・・。

この神山高校は去年の甲子園大会の地区予選の決勝で負けてしまった。

実は、私が高校野球のマネージャーをやりたいと思ったのは山高校のエース、藤ヶ谷 太輔に憧れたからでもある。

藤ヶ谷 太輔は去年、2年生エースとして大活躍していた。
そんな彼の姿を見て感動した。
だから、マネージャーになって彼を支えてあげたいと思っていた。

それなのに、去年の夏が終わってから練習に来てないなんて・・・。

私が、がっかりしていると野球部の顧問の「鬼塚 英吉(おにづか えいきち)」先生に声を掛けられた。

「あれ!?もしかして君が1年生で、たった1人、野球部のマネージャーをしたいと言った子??」

「はい。そうです。神崎 麗美です。今日からよろしくお願いします!」

「おう!俺は、この硬式野球部の顧問の鬼塚 英吉だ。よろしく!」

そう言うと鬼塚先生は大きな声で部員たちを呼んだ。
どんどん集まってくる。

先生は、みんなに私の事を紹介した。
「今日から、お前らのマネージャーをしてくれる1年生の神崎 麗美さんだ。」
私は少し小さい声で
「よろしくお願いします。」
と言った。

部員のみんなは笑顔で拍手してくれた。

すると、一人の部員が私の前に来て、
「俺、3年の松村 北斗(まつむら ほくと)って言います。一応、今はキャプテンっぽい仕事してます。よろしく!」
笑顔で私に話し掛ける彼を見て
「優しそうだな。イケメンだし。」
と思った。

私は北斗さんに聞いてみる事にした。
本当のエース。藤ヶ谷の事について・・・。