用意周到なマークさんのことだから、もっと厳重に警備されている医療機関やホテルを選んでいるのかと思っていたのだが……
山の中にぽつりと佇むそれは、自然の山々に囲まれた老舗旅館で。
注意深く周囲を見回してみても、黒服のボディーガードはおろか人の気配すら感じられない。
それに、ここは……
「……………………」
───ここまで来て、与えられた情報がデマだったら……慧の奴、マジでシメる!
そう心に決めて、ゆっくりとその門を潜った。
「いらっしゃいませ」
当然のことながら、玄関に足を踏み入れたところで声が掛かる。
無視するわけにもいかず、声の主へと視線を向けると
「……あの、お一人様ですか…?」
躊躇いがちに尋ねてくる若女将らしき女が、入り口と俺を交互に見ていた。


