「誰がハゲだ、誰が」


「い゛っ!」


新たな第三者の低い声とともに、ゴツン、と慧の頭に怒りの鉄拳が落ちる。


「い──────ってぇ───!!」


「自業自得だ」


涙目になりながら抗議の声を上げる慧に、冷ややかな視線を向けたのは響だった。


「なに人の恥ずかしい過去を、勝手に弟にバラしてんだよ!」


「え~、別にいいじゃん。今はもうハゲてないんだからさぁ」


「よくねぇよ!」


「ぐぇっ!」


まったく反省していない慧をホールドした響は、「ごめんなさい、ギブです、ギブ───っ!!!」と首を絞めている腕をばしばしと叩かれて、ようやく力を緩めた。

随分とタイミングよく現れたものだと思っていたら


「何を騒いでいるんだ、慧」


どうやら、兄貴と隣の部屋に居たようで。

響の後から顔を覗かせた兄貴が、重そうな書類を手にしながらリビングに入ってきた。