Wonderful DaysⅠ




取り出した携帯を開いて、相手を確認する。

画面に映し出された名前に軽く溜め息を吐いて、通話ボタンを押した。


「───はい」


『魁か? お前、今、何処に居るんだ!?』


耳に届いたのは、慌てた様子で聞いてくる父さんの声で。


「……ロンドンの、ど真ん中」


『ど真ん中って……私が今居るこのホテルも、ロンドンのど真ん中なんだが。随分と大雑把な説明だなぁ……』


俺の答えに呆れ返っていたけれど、取り敢えずは無事を確認出来てホッとしたのか、口調が緩やかになってきた。


『もう7時を過ぎているのに、子供が一人でいるなんて危険なんだぞ。そこまで迎えに行くから、場所を教えないさい』


今日も朝から仕事で外出していた父さんは、きっと置き手紙を読んだばかりなのだろう。

有無を言わさぬ口調で言う父さんに負けて


「ホテルの近くだから、迎えは要らないよ。今から、戻……」


「今から、戻るから」と伝えようとした時だった。


「…………っ…………!!」


視界の端に映った見覚えのある漆黒のリムジンに、思わず息が止まる。