───あの時……
咄嗟にマリアに指輪を渡していなかったらと思うとゾッとする。
『マリアが受け取った指輪が正式な結城家の婚約指輪ならば、無下に扱う事は出来ないからな』
マークさんの言葉の通り、あの指輪を渡していなければ、何度申し込んでもマリアとの婚約は無かった事にされていた筈だから。
あの時の判断は正しかったと、マークさんの言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろしたのは、つい先日の事だ。
マリアとの婚約を確実なものにする為には、先ずはあの人に会わなければならなくて。
父さんが持っていたマークさんの会社の名刺から電話番号を知った俺は、あの人がいるであろう本社にアポを取るも、相手が子供だと知ると見事にスルーして電話を切った受付嬢の女。
「……………………」
通話を強制的に終了させられた受話器からは、ツー、ツーと無機質な音が響くだけだった。
それを無言で睨み付けた後、諦めずに何度も電話を掛けてみたが……
相手が俺だと分かると、直ぐに切られて、終いには着信拒否。
───おい!!


